「四時ノ順環」 耳鼻咽喉科医としての成長を楽しむ

平成28年5月1日より和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科学講座の第5代目教授を拝命致しました。当教室は昭和20年の大学創立とともに開講され昨年開講70周年を迎えました。

耳鼻咽喉科は、聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚の「感覚器」と、嚥下・音声の「機能」、頭頸部癌に対する「腫瘍外科」の専門的診療を担います。いずれも生活の質に大きく関わる領域であり、高齢化や社会ニーズの変化からさらに役割が増える領域と思います。また、多くは体表面に露出した生体防御の第一線に位置することから「感染症」が頻発する、感染免疫が深く関わる領域ともいえます。

この広い専門領域を持つ耳鼻咽喉科においては、基本となる思考過程が重要に思います。これまでに、急性中耳炎や急性鼻副鼻腔炎を中心に、感染症の発症と難治化の機序についての基礎的・臨床的研究を行ってきましたが、その過程で肺炎球菌やインフルエンザ菌が極めて巧妙な機序で宿主免疫応答から逃れることに驚きました。基礎研究は、臨床医としての成長にも大きく役立つと考えます。一方、現在の医療環境や医学教育は、新専門医制度を始めとして大きな転換期にあると感じます。ともすれば、治療成績や研究成果に目が奪われがちですが、医学における臨床や研究は、すぐに成果や目標を達成できるものではなく、時間をかけて培われる場合も多いです。医学の本質的な重要性は、いつの時代においても変わらないと思います。

「四時ノ順環」というのは、春夏秋冬を意味する吉田松陰の人生観の言葉ですが、

臨床、教育、研究にもつながると思います。「春」に新しい種を蒔き新しい芽生えがあります。「夏」には、大きく育ちます。「秋」は実りの季節であり、ようやく収穫の時期となります。「冬」には、秋に収穫した実りを蓄え、種の選定を行い、次の春に備えます。

これまで、和歌山にとどまらず多くの諸先輩から温かいご指導を受け、今日があると思います。自分が教えていただいた色々な種を蒔く「春」の時期と思います。教室員と様々な種を蒔いていければと思います。まだまだ未熟で、どれだけの芽を育てることができるか大きな目標課題です。教室員とともに努力し、少しでも多く種蒔きをし、「夏」に育て成長するか楽しみでもあります。また、さらなる「秋」の実りを教室員とともに楽しめればと思います。

「四時ノ順環」のなか、耳鼻咽喉科学の発展に少しでも貢献できればと思います。今後とも何卒ご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科学講座

教授 保富 宗城 (ほとみ むねき)